仮面ライダービルド ~1年間を振り返って~

仮面ライダービルド、ついに最終回を終えてしまいましたね。
私が思っている結論から言うと、『終始エボルトという地球外生命体に振り回された作品』だったなと感じます。仮面ライダー。とりわけ平成仮面ライダーの作風は、ラスボスが出てくるまで敵味方がコロコロ入れ替わる というのが大きな特徴として挙げられます。今作仮面ライダービルドもそれに漏れず敵が入れ替わってはいましたが、その事件や陰謀の裏では必ず真の黒幕であったエボルト(当時はブラッドスターク)が糸を引いていたという。しかも彼は10年前。つまりは物語が始まる前から石動惣一に憑依していたわけですから、1話の石動は=スターク。これが何を意味するかというと、今作のラスボス エボルトは、本編1話~ずっと姿かたちは違ってもTV画面上には出続けた ということになります。
これほど出演期間の長いラスボスがいたか?と思えるほどに…。

 

そんな仮面ライダービルドを物語の節目毎で区切って改めてみていこうと思います。

 ますは、1話~16話の東都編
東都編では、記憶喪失の主人公、桐生戦兎と後にかけがえのないベストパートナーとなる、当時脱獄犯とされていた万丈龍我。この2人を中心に物語が展開されていきました。
東都の街に出没する謎の怪人”スマッシュ”と戦いながら、自らの記憶を追っていく戦兎。スマッシュにされた人間から話を聞き出そうとするも、自らと同じように実験前後のことは記憶にない という者ばかり。そこで自身も同じように人体実験を施されたのかもしれない。そう考えるに至った戦兎は、同じく人体実験されたと言う万丈の無実の証明のためにも、人体実験を行っている謎の組織「ファウスト」について調べてみることに。

このような展開でしたね。
その中で次第に明らかになっていく事実。ファウスト創始者は、万丈が殺害したとされる葛城巧という人物で、彼は”悪魔の科学者”の異名を持っていた。
戦兎の記憶の中に唯一残っているコウモリ男=ナイトローグを追っていると突如現れたコブラの怪人、ブラッドスターク。彼の意味深な言葉も参考に調べていくと、殺されたはずの葛城は生きているかもしれないという疑惑と、まるですべての手の内を知っているかのような行動を取っていたスタークが戦兎の一番の協力者であった石動惣一であることが判明。さらに彼と行動を共にするナイトローグこと氷室幻徳の口から語られたのは、桐生戦兎、お前こそが悪魔の科学者、葛城巧なんだよ という衝撃の事実だった。

かなり駆け足でしたが、ざっくりまとめるとこんな感じでしょうか。
この辺りは、まだキャラの核心など細かなことが一切わかっていない序盤 ということで、1つ謎が解ければ、また新たな謎。といったかんじでミステリアスではありながらも、その謎を1話1話丁寧に素早く解いていく疾走感。この2つが重なり合ってとてもスリリングで見ごたえのあるものでした。

続く17話~28話は戦争編(うち、22話までは北都、23~28話までは西都編)ということで、主に年明けからは、作品中でも話題となった戦争編がスタート。

年末から、かなり衝撃的な事実が明らかとなる中、疲労で病に倒れた父、氷室泰山に変わり、東都首相代理となった幻徳。彼の口車の影響もあり、ついに北都が東都に攻め込んで来た。なぜ、東都にしかないはずのスマッシュが北都に? 焦る幻徳であったが、すぐにスタークこと石動の影が伺え、さらに以前、自分とのつながりを切り、スタークを新たなビジネスパートナーとし、軍需産業のトップを目論んでいる難波重工も暗躍していた。ファウスト壊滅作戦を生き延び、難波重工開発担当となった幻徳の元秘書、内海成彰はスタークと共に北都にスマッシュの技術を流し、石動が戦兎のデータからコピーしたスクラッシュドライバーをも作り上げ、新たなる仮面ライダー、グリスこと猿渡一海に手渡していたのだった。そして彼をカシラと慕う3人組「北都三羽ガラス」たちは、謎のフルボトル「ロストボトル」を使い、特殊な形状のスマッシュへと変身する。
彼ら北都の軍勢にスクラッシュドライバーも用いながらなんとか応戦する戦兎たち。しかし、やっと戦力の差がなくなってきたと思えた矢先、三羽ガラスが新たなる進化を遂げ、黒いスマッシュへと変化した。それには葛城巧、かつての自分自身が作り出した禁断のアイテム「ハザードトリガー」の存在が。三羽ガラスは直接人体に注入したので、戦闘に敗れれば命はないという石動。仮面ライダーであるお前も使い続ければ自我を失い暴走する と続けた。これを使わずして東都の勝利はない。トリガーを引いた戦兎だったが、耐え切れず暴走。三羽ガラスの一人、青羽を殺め、戦意喪失しているころ、首相に復帰した泰山から、仮面ライダーを各都の代表とし、その勝敗で戦争の勝敗を決する という代表戦が提示され、それに北都が乗ったこともあり、一週間後に代表戦をすることに。
首相である泰山や、敵であるはずの一海からも鼓舞され、代表選への出馬を表明した戦兎。当初はハザードトリガーを使わず、他のフルボトルの組み合わせで勝利しようと考えていた戦兎だったが、グリスにその考えは通用せず。ハザードトリガーを引く戦兎。
その強大な力により東都に勝利をもたらした戦兎だったが、またも暴走。変身解除した一海に襲い掛かる。 万事休すか と思われたその時、暴走する戦兎を止めたのはスクラッシュの副作用を乗り越え、その力をわがものにした万丈だった。

これで戦争は終わった。と安堵する両者。しかし、スタークが協力していた北都を見捨て、密かに手を組んでいた西都と密約を交わしていた。こうして北都を取り込んだ西都が、東都を取り込み三国統一を図ろうと休む間もなく戦争をしかけてきたのだった。

東都との代表選後、北都の仲間を救出しに向かった黄羽が西都の襲撃を受け、命を落とす。これを機に手を組んだ東都・北都連合軍は、西都に立ち向かうが、北都の時以上に強力な難波からのバックアップを得た西都と、新たな仮面ライダーローグとなった幻徳らの前に歯が立たず、これまで死守してきたパンドラボックスを奪われてしまう。

返してほしければ、3対3の代表選をしろ。我々が勝てば東都と北都が持っているボトルを頂く とあきらかに相手側に不利な要求を突き詰めた西都。しかし、負けじと戦兎はあらたなビルドの強化アイテムを仕上げ、龍我・一海はお互いのハザードレベルを上げることで西都軍に応戦した。
1対1で迎えた大将戦。ビルドVSローグ。難波の暗躍もあり、苦戦を強いられた戦兎。だが、戦兎が用意していた秘策によりその窮地を脱し、代表選を連合軍の勝利 という形で終わらせた。これで今度の今度こそ戦争が終わる・故郷へ帰れると安堵する戦兎らだったが、西都の負けを知った難波重工会長、難波重三郎はスタークの持つ能力で、西都首相、御堂正邦を殺し、なんと自らの顔を殺害させた御堂の顔と変えることで西都首相の地位を奪い、マスコミを悪用。代表戦の結果を捻じ曲げ、西都に負けた東都がなお、攻め込んで来た行為に対する報復 として、東都へと進行を開始したのだった。

この辺りは、『戦争』という重いテーマを子供向け番組の仮面ライダーで、このご時世の中で描くか?と視聴者に衝撃を走らせた部でした。その中で代表戦という斬新な形で決着をつけたのは、記憶にも新しいかと思います。2月、3月は代表戦に次ぐ代表戦で少し間延びしたかな という感じも私的にはいたしますが、みなさんはいかがでしたでしょうか?
そんな私の気分も4月~開幕した新章、エボルト編(29~45話)で吹き飛ぶこととなりました。

新章開幕直前、28話終盤にて、難波重工の大量の新兵器の起動シーンには、これから、戦争をも超える大スケールの何かが始まる… と予感させていましたが、その高揚を裏切らない形で三都を影で操っていた難波がついに動き出す。その一方で、表向きの国の支配は難波に任せ、スタークもパンドラタワーの完成という自らの目的達成のために動き出す。
そんな中、物語序盤からハザードレベルの急激な上昇が際立っていた万丈に、「人間ではないかも」という疑惑が浮上し調べると、なんと万丈は火星を滅ぼした地球外生命体、エボルトの遺伝子を体内に宿し生まれてきた人間。つまり、エボルトの一部であることが発覚。そこから物語はさらに加速する。
難波もスタークの不可解な行動に不信感を募らせるが、上手く言いくるめられ、結局は「難波の支配をより確実に・強固なものにするためのベルト探し」を手伝うことになる。
かつて葛城巧の父、忍が修理したとされる、世界に1台しかない究極のドライバー、「エボルドライバー」。スタークは、難波に東都首相、泰山をさらわせ、彼の身柄と引き換えにドライバーを要求する。何とか首相を助け、ドライバーをエボルトの手に渡すまいと奮闘する戦兎たちですが、その甲斐むなしく、ドライバーはエボルトの手へと渡ってしまう。
そこから、仮面ライダーエボルとして本領を発揮し始めたエボルトは、万丈のハザードレベルを戦いの中で5,0にまで上げさせると、隙をついて彼に乗り移り、体内にあった自分の遺伝子を回収。さらにフェーズ1からフェーズ2に昇格し、徐々に本来の力を取り戻していく…。
何とかエボルトの暴走を食い止めようと、一致団結して立ち向かうライダーたちだったが、エボルトは次々と乗り代を変え、フェーズを確実に上げていく。そして仮面ライダーたちの自らを倒そうとする意志も逆利用し、ついにフェーズ4。本来の力を取り戻す。

そのころ、フェーズ3時代に乗り移られていた戦兎は、葛城巧としての記憶を取り戻し、戦兎として開発しようとしていた『究極のフルボトル』の完成を急ぐ中、記憶がよみがえったことで、改めて国内で勃発した戦争というものの悲惨さに心を痛め、自分以外の人間を信用することができなくなっていた。

ついに完成した究極のフルボトル、ジーニアスボトルを手に、決戦へと向かう葛城。しかし、現在の精神状態では、ジーニアスを扱うことができず、エボルト、さらに彼によって主人であった難波を殺され寝返った内海の変身する、仮面ライダーマッドローグに苦戦する中、万丈の魂の叫びによって、眠っていた桐生戦兎が目を覚ます。葛城巧と桐生戦兎。1つの器の中で相対した2人は、葛城がもう一度、桐生戦兎や彼が信じ、0から関係を築き上げてきた人間たちを信頼する という形で戦兎に主導権を預け、これによりジーニアスへの変身が可能となったのである。

ここから、昨年仮面ライダーエグゼイド内でも「黎斗劇場」なるものがありましたが、それにも負けない「エボルト劇場」が開幕したのです。先に公開されていた玩具情報などからエボルトが一筋縄ではいかない敵であることは想像できていましたが、まさかここまでとは。そして万丈や戦兎をほぼ1話ごとにのっとるという、同じような展開が続きましたが、物語の中でスムーズに進み、展開が滞りなくされていたことに驚かされました。

内海の反応を見て面白くなったエボルトは、計画を延長し、単に地球を破壊するのではなく、地球に住む者たちをロストボトルによって過激化させ、人間同士の共食いで地球を滅ぼす という非道なものに変えていた。果ては滅ぼした地球を自らの思うがままの星=新世界にするためにロストボトルの黄金化=グレードアップを狙い、次々に人間にネビュラガスを注入し、スマッシュ化させていた。この「人類ロストスマッシュ化計画」を推進するエボルトに協力者がいることが浮上。その協力者とは、エボルドライバーを作ってしまった罪悪感やスカイウォールの惨劇のバッシングなどで自殺したと思われていた葛城忍その人だった。忍もまた目的をエボルトと同じにしていると言うが、その真意は「エボルトの思うがままの新世界」ではなく、「エボルトのエネルギーを利用し、エボルトのいない新世界を創る」ことであった。
目的達成を目指す忍により、残るロストボトル3本の生成のための犠牲となり、復活の道は途絶えたかと思われたエボルトだったが、わざと仮面ライダーたちに負ける直前、自らの遺伝子を内海の体内へと逃がし、難を逃れたエボルトはそのまま忍を毒殺。忍は死の直前息子に、エボルト打倒の秘策を託し息絶える。

その後、「新政府の樹立」と称し、エボルトの同族である3人を地球へと招集したが、エボルトがすんなり地球を滅ぼさないことから、対立。一時的そして結果的に、戦兎たちに協力する形となったエボルトは、仲間たちに「俺を裏切った時点でお前たちの運命は決まっていたんだよ」と言葉を手向けにし、ついに地球を自らの思うがままの星にしようと、長らく先延ばしにしてきた地球の破壊を開始する。
最終決戦を前に、次々と命を落としていく仮面ライダー。しかし、仲間の死を乗り越え、ついに新世界の創造に成功した戦兎。最後はエボルトと新世界との狭間で死闘を繰り広げ、戦兎と龍我の絆のフォーム、「仮面ライダービルド、ラビットドラゴンフォーム」の一撃によってエボルトを撃破。ついに父子の念願であった新世界を作り上げたのだった。

 

駆け足で物語を振り返ってきましたが、こうしてみてみると、改めて仮面ライダービルドがいかにエボルトという存在に振り回されたかというのがよくわかると思います。しかし最後にはそんなエボルトの計画のために作られたヒーロー、桐生戦兎は、自らのアイデンティティーを確立し、その過程で出会ったかけがえのない仲間たちと共にこの計画の創造主たるエボルトを打ち破り、平和な地球を、人々の未来を見事、『ビルド』してみせました。
仮面ライダービルドというのは、戦争の悲惨さ、化学の発展に対する警鐘などはもちろんのこと、人間一人一人が持つ可能性 に大きくスポットを当てた物語なのかなぁと思います。

そんな仮面ライダービルドですが、最終話後の新世界を舞台に新たな物語が作られることが発表されました。それも楽しみにしつつ、先週から新たに始まった新シリーズ
仮面ライダージオウ」にも注目していきたいと思います。
どうやら当面は2話一括りで進んでいくようですので、その区切り区切りで感じたことや気になったシーンの考察など、当サイトでもやろうかな と思っています。